愛しさくらの君へー桜の鬼・現代編-【完】

冥府には十人の王がいる。

この官吏はそのすべての王に仕える官吏で、生前の名もあるが、今では呼ぶのは櫻だけだ。

官吏は人間だったが、鬼の血を引いた半鬼で、更に櫻の命をもらって命をつないだため、半鬼よりも、より鬼に近かった。

その能力から、生まれ変わる輪廻転生の輪に入るよりも、冥府の官吏となることを提示され、そしてそれを選んだ。

『三人とも、しばらくは冥府の雑用ですね。当分は桜の古木には戻れないと思ってください。はい。決裁終わり』

『あいかわらず厳しい……』

桃花が、うぬぬ、とうなっている。ゆきも消沈していた。

櫻はこうなることはわかって氷室の命に手を加えようとした。桃花とゆきには手を出すなと言ってあったのだが……。

『まあ、ゆき、桃花。雑用ついでに現世を見ることは出来るし、しばらくは息子の雑用してやろうぜ』

櫻が言うと、桃花とゆきはうん、と頷いた。

『桜葉ちゃんびっくりするだろうなー』

『再開の場面くらい、ちょっとのぞきたいわね』

『そう――官吏に頼んでみるわ』

しばらく現世禁止が出された三人は、官吏に頼み込んで、水鏡(みかがみ)越しにその願いを果たした。

桃花とゆきは大泣きして、櫻も袖の下でこっそり涙を流した。

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