愛されることに 慣れていなくて
「でも私、あの支店長の下ではもう絶対に働きたくないって言ったんです。そしたら、彼は既に退職し、横浜支店にはいない。安心して欲しいって言われました。何故辞めたのかは教えてくれなかったので、同僚だった人に訊いたら、あの支店長、仕事中にラブホテルに若い社員と行ってたり、自分の飲み代を接待費から出してたりしてたみたいなんです。入ったばかりの社員も辞めるっていうので、理由を聞いたら、支店長とラブホ行ったのバレちゃって〜ってケロッとした顔で言ってたって。支店長が交代してから横浜支店の評判もただ下がりだったらしくて、本部で調査してくれたみたいです。私のことをちゃんと評価してくれていたんだなぁって嬉しくなりました。それなら、この会社でもう一度働きたいって思ったんです。主人にも相談して、また働くことに決めました。だけど……」

「桃ちゃんですね」

「はい。定時で帰るのに慣れてしまって、ずっと嫌だ嫌だと泣いてるんです」

「風間さん、桃ちゃんはきっと大丈夫ですよ」

「そうでしょうか」

「桃ちゃんは、子供たちにとってお姉さんみたいな存在なんです。お預かり組の子供たちは桃ちゃんが来なくなってからとても寂しそうでした。なんで桃ちゃんはいないのって、私が責められるくらいに。だから、また桃ちゃんが来てくれるって知ったら大喜びすると思います。その時きっと桃ちゃんは、みんなにとって自分がとても必要な存在なんだということを理解してくれると思います。とても優しくて賢いお子さんなので、お母さんの思いをちゃんと伝えてあげれば、わかってくれると私は思います」

「桃にもう一度ちゃんと話してみますね」

「そうしてあげてください」

「先生、ありがとうございました。桃のこと、よろしくお願いします」

「もちろんです!」風間さんの表情が少しだけれど、穏やかさかを取り戻してくれたようだった。
< 97 / 185 >

この作品をシェア

pagetop