謎多き旦那様の嘘、または秘密

偶々わたしが配達していて番地に詳しく、それが分かっただけで、他人の住所に兎や角言うことはない。

山田太郎も明らかに偽名っぽいけど、本当のことを書く必要も特にない。

次回、ポイントカードを忘れずに持ってきてさえくれれば。

私は今回の分のハンコを三つ押して、カードを折り畳んで返す。

「いつもご利用ありがとうございます」

自分の袖が落ちて、腕の痣が見えた。紫だったのが落ち着いて、黄色くなっている。

すぐにそれを戻してお客様を見上げる。

それが旦那様だった。




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