婚約破棄されたい公爵令息の心の声は、とても優しい人でした

18.国王陛下と公爵様

「ヴィンセントじゃないか。久しぶりだな」

 護衛騎士を両隣にたずさえ会場内へとやってきた国王陛下は、真っ先にヴィンセント様に声をかけた。
 公爵様の弟でもある国王陛下は、その容姿も公爵様によく似ている。そしてヴィンセント様にも。
 そのおかげもあってか、初めて拝見した国王陛下の姿に少しだけ近親感を覚えた。

 ヴィンセント様は私の体からそっと手を離すと、国王陛下の元へと進み丁寧に頭を下げた。

「国王陛下。大変ご無沙汰しておりました。本日は父が病床に伏せており、ご挨拶に伺えず申し訳ありません」
「そうか。残念だが、それなら仕方あるまい」

 そう言うと、国王陛下は伏せ目がちに目を背け、口元に手をあてて意味深に呟いた。

「……果たして、それが真実なのかは本人しか分からないが」
「……?」

 真実……? 一体どういう意味だろう。

 気になるけれど、国王陛下はその事に触れる事無く、再びヴィンセント様に話かけた。

「ヴィンセント。しばらく見ないうちに立派に成長したな。最近、お前に関して妙な噂を耳にしていたのだが……こうして見る限りだと何も心配いらないようだ。次期公爵として、今後の活躍を期待しておるぞ」
「はい。有難きお言葉、感謝致します」
「うむ。それはそうと、私に言わなければいけない事があるのではないか?」
「はい。少々お待ちください」

 そう言うと、ヴィンセント様はくるりとこちらへ体を向け、私に手を差し出し柔らかい笑みを浮かべた。

「レイナ、おいで」

 私の大好きなイケボイスで優しく呼ばれて、思わず胸が高鳴った。

「あ……はい」

 ふわふわと浮かび上がりそうな感覚に包まれながら、ヴィンセント様の元へ引き寄せられる様に足を運ぶ。
 差し出された手の平に自分の手を重ねると、その体の近くへと引き寄せられた。

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