0.01mmの距離感

1章

私,鵜久森羚は、蝶咲中高一貫校というこの場所で新たな人生の扉を開くことになる。

この蝶咲中高一貫校という中高一貫校は
親が口うるさく兄と同じ場所で受験をと言うので、受験は正直親の期待の眼差しがウザったくて息も詰まったが、学校見学に足を踏み入れれば「面白い所」にあてはまったし、何より私の幼馴染紬とは奇遇でこの同じ中高一貫校に入ることとなった親が仲良いこともきっかけで話しているのは薄々感ずいていた。

兄はここの生徒会長をやっていると聞いた兄は勉強熱心で成績も私と比べて優秀。兄とは最近話してない、なんでも寮で暮らしてるんだとか。
私は朝紬と待ち合わせて、おろしたての制服を身にまとい紬を待つ。
「相変わらず遅いなぁ…」
そう溜息をつきながら待っていた。
おろしたての制服は普段の服よりも責任と緊張、それに普段着るような服とは違うから重たさが体にまとわりつくも、細く首元を飾る紐状の可愛いリボンが私の心を躍らせ背筋を伸ばす。うちの学校は制服が可愛くていいねと前夜私の友人戸水美咲、彼女もそう言っていた。戸水美咲 。 彼女はつい最近好きな音楽の話で意気投合してたまたま彼女が予備校として構えていたこの中高一貫校に審査が通ったということで同じ中高一貫校になったのだ。彼女は私よりも頭が良く、本当はもう少し頭のいいところに行けたのにとも思った。
そう思っているうちに紬が走ってきた
「ちょっと、待って、羚ぃ…、俺今日寝癖やばくなぁい…?」
寝癖がやばいとしょうもない事で半べそをかきながら私に駆け寄ってくる。私は彼にクシを渡して
「椿のオイルでつけてある櫛だからそれで解かせばいいよ」と彼の手に置いてやる。
ついこの間まで私の方が身長が高かったはずなのに、私の事をとうに越した紬の大きな手になんだか違和感を覚えつつも彼はその櫛を受け取り前髪を解く。
「なおったぁ…?」と私の方を見るもアホ毛がぴょんっ、と立っているので「ひとまず学校についてから直してあげる」と笑いながら、小走りで学校へと向かう。
蝶咲中高一貫校。
この学校はつい最近できたばかりだという
本当にそうだろうかと思う部分が兄曰く度々あるらしい、なんでも廃校を改造したとか元は廃病院だったとか、7年前にできたばかりの新しい校舎らしい。要するに私はここの7期生という訳だ。
そんな考え事をしていれば紬が一言言う
「特別得意なことを募集してる高校…羚は勿論「ゲーム」の事だよね」
と当たり前のことを聞いてきたので私も紬に
「紬は「剣術」よね?」と紬と同じように首を傾げて問いかける二人とも当たり前だと顔を見合わせる。
学校の手前のとんでもなくキツい坂を上り終われば校舎が見える。
「まずはクラスを確認しないと行けないか」
紬がそういうので「クラスが同じだといいけど」と校門を跨ぐ、2人でおはようございますと、校門前にたっている生徒会であろう方々に声をかけて。先生であろう人からクラス表が配られ、自分たちの名前を見つける。
生憎紬とはクラスが別れてしまった。
私は1年C組,紬は1年A組だ。
だが、戸水美咲とは同じクラスのようだ彼女の出席番号は20番で、私は4番。席は遠いだろうなとも思って下駄箱に紬と向かう、紬は「俺下駄箱1番下なのおかしくない?」と言うも、私は逆に1番上だったので「交換する?」と笑って見せた、ただ紬は腕が長いから届くだろうと思っていた私も別に1番上が届かなかったり不便という訳では無いのだが、紬と比べれば身長差があるものだった。
1年生の教室は4階にあるらしい。
2年は3階、3年は2階、職員室やら移動教室に使われる教室は主に1階と2階だ。
別棟があり、A組からE組まであるがAからCが東棟、D〜E、学習室を含めて西棟となる。
廊下は長い。
紬はぶつぶつ文句を言いながら「なぁんで俺ら4階なんだよ…、ってあれ」と話をずらす、友達でも見つけたのだろうかと思って視線を合わせると、1人4階に足を運ぶものに違う色の校章をつけている人がいた、あれは多分2年生のはず。
最初紬は「忘れ物かなぁ…」と言いながらその子を目で追っかけていていて、私は「留年でもしたんじゃない?」と傾げて見せれば本当に留年していたのか、紬のクラスに入っていく、紬の教室から数瞬戸惑ったような声が聞こえた。紬は「あんなイケメンと同じクラスなの、?意味わかんないけど先輩だよな」と、一目惚れでもしたのかという勢いで私に手を振り自分の教室に入っていく。
やれやれ、と思いながら私も自分のクラスに入ると、大人しく難しそうな本を読んでいるかと思えば、可愛らしい動物のお話を好んで読んでいる美咲が先に座っていた。
美咲に「おはよう」と手を振る、そうすると「遅かったね、また小学生の時に散々からかわれた紬くんとの登校?」と少しからかいながら言うので私は「そんなんじゃないってば、第一…ううん、なんでもない」私自信が紬の事を恋愛対象として見ることは絶対にない。
生まれてからずっと一緒で、紬はメガネをかけているが、眼鏡をかけてなかった頃の幼少期だって知っている。
ただ、紬は勉強が大得意という訳ではなく、とりあえず聞いとけば出来るという人物だったので、そこまで努力という努力はしていない。というのだ、まぁそうだろうなと思っていた。
絶対に無いと言い切れるのは、彼が紛れもなく同性愛者ということだ。
私自身いいことだとも思っている。
別にアイノカタチだなんてなんでもあるし、と考えていれば美咲が「ちょっと、聞いてる?」と私に話しかけるので、「考え事!」
と誤魔化しまた後でと美咲の席を後にして自分の席へと座る、そうすれば担任であろう先生が入ってくる。
その先生の容姿は少しぽてっとしてる体型で、お世辞にも「清潔感がある」とは言えなかった。その先生が口を開くと
「皆席に着いてるな、まずは入学おめでとう。これから予鈴がなったあと体育館に向かい、別棟に移動して、校内見学をしてもらう。生徒会長からの挨拶、校長からの挨拶をしっかり聞くように…あ、申し遅れた俺の名前は田中柾。田中先生とでも呼んでくれ教科は国語だ。俺の授業では寝るなよ」と、何故か気取ったような話し方をする先生で、話し方が鼻につくただ、悪い先生では無さそうだ。
先生の言う通り予鈴がなれば出席番号順に並べられた。「整列」と先生が前にたつので
私は前の身長の高い男子と小柄な女子の後ろに並ぶ、隣は色が細くて血管が透けてるような男の子だった、ただ細いと言ってもゴツゴツとした手、この子にも「特別得意なもの」というものがあるのだろうと、その手を見つめていると、態度悪く「何」と言われたので「あは、はごめんごめん、見とれちゃってて」と話を逸らすようにしたが、名前も知らない初対面のやつからそんなこと言われたら誰しも驚くだろうと思い、顔を伺えばウブなもんで「そーかよ…」と顔を逸らす、この子面白いなとにまぁ、と笑ってみせるも彼はこちらに顔を向けていない列が揃い体育館へと向かう、西棟を通り過ぎて渡り廊下を渡り階段をおりる、南棟に当たる部分だろう、そこから体育館が繋がっていて、新しめの校舎だなと思ったが、兄が言っていた寮が見えれば少し廃れたアパートのようで「成程」と納得した。
また、1年A組からE組まで集められた体育館でしばし時間を過ごす。
その間、兄はどこにいるかと探していたら
既にステージ上の裏にいたのか出てきた。
久しぶりに見た兄は何故か少し痩せこけていた。後で理由を問い詰めようと思いながら兄が話し始める「蝶咲中高一貫校に入学した1年生の皆様、まずは入学おめでとうございます。蝶咲中高一貫校生徒会長の 鵜久森 陽聖 (うくもりひさと)と申します。以後お見知り置きを。それではこれから皆さんに校長先生からの話と校内見学を始めてもらいます。A組からC組は東棟、北棟から、D組とE組は西棟、南棟から、A組からC組は私が案内させて頂き、D組とE組は校長先生が案内人となっております立ち入り禁止の場所もあるのでくれぐれもよそ見はしないように」
一同がはい、と返事をすれば司会であろう人が、「次に校長先生お願いします」と頭を下げる。校長先生がでてきた、スラッとした女性だ。高身長でそこら辺の男子くらいあるだろうかただ、その高身長はモデルさんのようで綺麗な人と捉えられるものだった。
校長が口を開く「皆さん入学おめでとうございます。鵜久森さんが言った通りなので此方からはあまり話すことはありませんが、一応自己紹介をさせて頂きます。蝶名橋 尊 (ちょうなばし みこと)と申します。以後お見知り置きを、ただ校長だからと言って堅苦しく接さなくて構いませんよ、私はイベントが大好きで皆様と関わる機会は多いはずですからね。長々と時間をとっても校内見学の時間が削れるだけですし、進めていきましょうか。」

そうすれば担任から「起立!」と声がかかるので背筋を伸ばし立つ。
私の兄が率いる学校案内か…と思いどんなもんだとついて行く、兄曰く「広すぎるから迷子にならないように」との事だった、確かに他の学校と比べたら大きい気もする。
ただ、内心あんたが生まれつきの極度の方向音痴だからだろうと思っていた。
そんな兄の特技…と呼ばれる部分は、文だ。文と言うのは簡単に言えば文才だ。
兄は昔から文才があり文字に愛されてきた。
ただ、本当に理系は苦手で数字には愛されなかった。
兄が率いる案内は1階から4階までの移動教室に使われるところ、3年生と2年生のクラスを回るもの、途中で美咲が「あんたのお兄ちゃん生徒会長だったなんてね、」と話しかけてきた兄についての話しはあまりしたことがなかった、「兄がいる」としか言ってなかったからだ、そんな美咲の特別得意なことはデザインだ。
センスがいいと呼べばいいだろうか。
何かを作るのにも、デザイン性は抜群であった。私がいつもつけている髪飾りを見る度に思い出すほどに、だ。
列を崩して好きに回っていいと言われ好きに見ていたら紬が寄ってきた、
「さっきの留年してきた子俺の斜め前なんだけど…!」とこそこそ言ってきたので「一目惚れ?あんたもやるねぇ…」と哀れみの目で見てやると「ちっがうんだって!、今回は本当に!」と言えば兄が寄ってきて「なぁ、紬。羚に寄るなッて言ったよなぁ…」と私ら2人の肩をトンっ、とする。兄は重度のシスコンで私に近付く男は気に食わないらしい。
「紬はそんなんじゃないって」と兄に言えば、紬は「俺好きな子いるしぃ…羚なんてこっちからごめんだね」と少し嫌味のように言うので、兄は「羚がなんだって?」と笑う、まぁまぁ、案内をと宥めて、案内を続行させた。だがよくよく考えると兄の言いたいことも分からなくもない。こんなに広い校舎だがここは中等部だ、高等部があると考えればⅡ棟がある訳でそれまた広いと思っていた。
ひと通り終わり教室に戻るよう言われた私達は別れて各々の教室に戻る
また席に着けば「鵜久森さんのお兄さんが色々仕切ってくれたと思うが学校見学は楽しかったか?」と言われ、私の方にいくつか視線がくる、もう慣れっこなので「あはは…」と笑ってみせる、「これから10分休憩があるから、その後に自己紹介を各々してもらうから考えておけよ。」そう先生が言えば、先生は教室から出ていった。
ほっと胸を撫で下ろし、一通りは終わったかなとため息をつく自己紹介だなんて何をすればいいのだろうかと思いながら、紬はどうしているだろうかと考える。

… はぁ 、
俺はため息をついてこの10分間をどう過ごすかと考える、ひとつ上の気になってる奴がいるって、羚に主張したのはいいものの、目の前が男女でいっぱいだ、「いやぁ…そりゃぁモテるよなぁ…」と思いながら、この10分間机に突っ伏してやろうと考えていたところ隣の女子が話しかけてきた
「…ね、君名前は自己紹介の練習がてら話しかけた。私の名前は小春 茉戯(うらら まつぎ)よろしくね。」と俺に握手を求めているのか手を差し出されたので、手を握る、その子の容姿は幼児体型ですこし女性的な膨らみがあり、小柄で色は小麦色、
自己紹介もしてないのにずっと手を握っているのは、と手を離す。
「えっと…小春さん、初めまして。俺は来栖紬(くるす つむぎ)って言います、俺でよければ仲良くしてくださいね」と、へらへら、とこんなやつと話してもらって申し訳ないと思いながら頭を下げれば可笑しそうに笑うので、自分もつられて笑った。
やがて予鈴がなる

… 紬は何とかなるか。てか自己紹介どうしよそう思ってれば予鈴がなって、先生が戻ってきた、「みんな席に着いてるな。とりあえずで悪いが、自分の名前と得意としてることを自己紹介して言ってくれ」と言うので一番最初の男の子から始まった。
「初めまして、俺の名前は逢沢聖那(あいざわ せな)得意な事だよな。俺が得意としてるのは「料理」なんでもござれだ、皆仲良くしてな」
そうすれば拍手が起こり、着席する
次に先程私の前だった小柄な女の子だ
「えっと、明坂莉穂(あかさかりほ)って言います、得意としてるのは…「釣り」です…、よろしくお願いします」
彼女の小さい声が教室に響き渡る、と少し小さい拍手がおこる、
次にさっきの隣のヤツだ。
「伊藤岳(いとうがく)得意なの、ない。以上」
と愛想無く座るも「ない」と言われれば皆がザワついたが担任は特になんともないという顔でいた。私の番が来た
「鵜久森羚(うくもりれい)と申します、特技は「ゲーム」です。よろしくお願いします」
ゲームと言えばみんな以外というような眼差しで私を見つめる。
それから、続き最後に先生が読み上げる
「逢沢聖那 、明坂莉穂、伊藤岳、鵜久森羚、逵間蒔、緖久山津慈、華東冬牙、今東希生、窪田瑠愛、齋藤茉那、鮫島界、島崎隆慈、鈴木詩奈、鈴本真夢、関口叶夢、瀬戸内悠喜、田島祐登、田村智慧、辻本渉夢、寺嶌誘夢、戸水美咲、楢崎佑馬、成瀬謬、西澤夏向、猫石杏人、長谷川穂夏、福山瑛人、巻原多希、三原瞬、村上恵、村田芭、山崎颯、八雲雅斗、油井琉太、吉田來海、徠堂彩明、陸畑宝稀、六宮万羽、若狭周、以上、1年C組計39名、全員出席」

この一言で私の高校生活が始まった気がした。
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