この嘘に、ピリオドを
シンプルなデザインの綺麗なウェディングドレスを見に纏い、ブーケを微笑みながら見つめている心春に、ジョンが「心春、すごく綺麗だ。ドレスよく似合ってる」と話しかけてくる。ジョンも今日はラフな格好ではなくタキシードだ。

「ジョンさんも、とてもかっこいいです」

愛おしい気持ちでいっぱいだ。頰が自然と緩んでしまう。だが、ジョンは少し不安そうな顔だ。

「心春、手作りの結婚式でよかったのか?綺麗なチャペルでもよかったんだぞ?」

島で結婚式を挙げることを提案したのは心春だ。不安そうなジョンの頰に心春はゆっくりと触れる。

「ここがいいんです。だって、普通のチャペルじゃ動物たちが入れませんから。家族みんなに祝福してもらいたいので」

「心春……」

ジョンの顔がゆっくりと近付いてくる。だが、その彼の唇は心春の唇には触れず、額に落とされた。

「唇へはこれからしなくちゃいけないからな」

「はい……!」

二人は手を取り、アマンダたちが待っている部屋へと歩いて行く。もう心春の口からは、「恋愛感情はない」という言葉は出てこない。

もう嘘は吐かないと、心春の心の中にゆっくりとピリオドが打たれた。
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