私が欲しいのは、青い春のその先

先生への気持ちは変わっていない。

ううん、むしろ想いは強くなっている。



大人になって良かったことと、悪かったこと。



良かったこと。

それは、堂々と先生とふたりで会えること。

それもプライベートな時間に。

こうして居酒屋でおしゃべり出来る未来が待っているんだって、高校生の私に教えてあげたい。



悪かったこと。

あの頃よりも臆病になったこと。

先生に気持ちを伝えたら、せっかくこじつけた「飲み友達」的なポジションも手放してしまうことになりそうで、私は今の今まで、想いを伝えることから逃げている。




いつもの私達は。

お酒を飲んで。

美味しいものを食べて。

程良く気持ちが良くなった頃。

お店の外に出て、お行儀良く「さようなら」を言って、それぞれの家に帰る。



でも今日は。

今日こそは。



(先生に好きって言いたい)





「黒崎さん、そろそろ出ましょうか」



沢渡先生が私の顔をのぞき込んだ。



「ちょっと酔ってませんか?気持ち悪くないですか?大丈夫?」

「酔ってないです」

「……本当に?」

「酔ってないから、先生、私の話を聞いてくれませんか?」



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