課長に恋するまで
 打ち上げの主役は一瀬君で、みんなにお酒を注がれていた。
 離れた所から一瀬君を見てて心配になる。

 酔いつぶれないだろうか。
 帰りは送っていかないとな。

 娘を心配するような気持ちでいた。

「課長、どうぞ」

 間宮君が隣に座って、日本酒をついでくれた。

「ありがとう」
「ねえ、課長聞きました?」
「何をですか?」
「一瀬先輩、結婚するらしいですよ」
「え」
 初めて耳にする。

「間宮ちゃん、課長にまで言ってるの」

 向かい側の席に座っていた鈴木さんが呆れたように言った。

「課長、あの、まだ本決まりじゃないみたいですから」
「ああ、そうなんですか」
「ちゃんと決まったら、一瀬ちゃんから報告があると思いますから、楽しみに待ってて下さい」
「ええ。楽しみにしておきます」
 とは言ったが、言葉とは裏腹に胸が痛い。

 葵から結婚の話をされた時以上だ。

 この胸の痛みは一体なんなのか。
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