課長に恋するまで
「課長、ジャズわかるんですか?」

 石上君がおしぼりで手を拭きながら言った。

「ええ、好きですから。今かかってるのはアートブレイキーのモーニンですね。焼き鳥屋でジャズとは意外性があって面白い」

 ジャズは丁度いい音量でかかっていて、耳に心地よい。

「そういえば学生の頃、銀座のジャズ喫茶に行ったな」

 独り言のように口にした。

「課長、大学は東京でしたもんね」
「ええ、18で東京に出て来ました。今とは違う風景でしたよ。石上君と一瀬君はご実家も東京なんですか?」
「俺は世田谷です。一瀬は千葉です」
「ちょっと今、千葉って、少しバカにしたでしょ?ディズニーランドあるんだからね。幕張メッセもあるし、成田山もあるんだから」

 いつもの石上君と一瀬君のやりとりが始まる。
 大人しそうな一瀬君が石上君にだけは強気な発言をするから面白い。
< 80 / 247 >

この作品をシェア

pagetop