あの頃からあなただけが好きでした

 それまで緊張した様にニコリともしなかった彼女が見せた笑顔に。
『なかなか可愛いな』と思ったが、その時はそれだけだった。



 最初の2ヶ月くらいはただお互いに預かった手紙を渡し、渡されるだけだったが。
 その内にちょっとした事を話すようになった。


 授業の事とか、試験の事とか、ごく普通の同級生の会話。
 そこからお互いの友達や食堂のメニューについてとか。
 それがいつの間にか、お互いの好きなものや嫌いなものの話になって。
 話の濃度が進んでいくのに、時間はかからなかった。



 長い夏休みが始まっても、特に彼女に対して何も思わなかったのに。
 ある日、マリオンが好きだと言っていた詩集を本屋で見かけて、彼女を思い出した。

 その日を境に、俺はマリオンの事を考える事が増えた。



 マリオンは今何をしているんだろう。
 海辺の街に旅行へ行くと言っていた。
 もう帰ってきたんだろうか。


 両親の前では、兄にオーブリー姉妹の話は聞けなかった。
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