あの頃からあなただけが好きでした

 ……あれは友達の家の集まりで、知り合ったお姉さんと出す、じゃなくて。
 ちょっとじゃれ合っただけなんだけど。
 と、親父には言わなかった。


 俺に対して随分な言い草じゃないかと思ったが。
 確かに俺には、以前からあれこれアプローチがあったので。
 それでまた、性格的に挑まれたら受けて立つ方なので。
 親父の判断は正しいのだろう。



 その日から、医薬が発達している帝国製の対媚薬の錠剤が処方されることになった。
 常に1回分を持ち歩いて、それこそどんなヤツが参加するかわからないパーティーやデートの前に服用した。
 不思議とこれを飲むと、したい気分も減退した。



 でも、それも昔の話。
 10年前の俺と今の俺との違いは、優先順位がはっきりしている事だ。


 高1の頃に、マリオン・オーブリーを好きだ、と自覚してからは。
 俺は誰ともデートしていないし、怪しげなパーティーに参加しないので、薬の服用を止めていたが、最近また飲み始めている。
 テーブルに挨拶に回れば、飲まされることも増えたからだ。

 例え、お客様でも信用は出来ない。


 20歳を過ぎても婚約者もいない、恋人もいない。
 女性から誘いは何度もあるが、俺は毎回流して
いる。
 今の俺はキレイなモノだ。


 たまに、発散する為に自家発電はするけど。
 誰かを相手にしたことはない。

 もう、7年くらいになるか。
 好きでもない女とどうこうするより、刺激的な
瞬間は、仕事をしていると訪れる。
 それで満足している。
< 164 / 171 >

この作品をシェア

pagetop