あの頃からあなただけが好きでした

「えぇっ、そうなの?
 おめでとう! コーカスの人?
 それとも王都の?」


 恋多き女だったクレアが今まで独身だった方が
不思議だったので、恋人を紹介すると言われても、特に驚かなかった。



 彼女の恋人は仕事を終えてから、合流するらしい。


「こんな時間までお仕事だなんて、やり手なんじゃないの?」

 そう言う私に、クレアはニコニコしている。
 余程その人の事が好きなんだろう。
 そんな彼女が羨ましい。

 スコットは今のこんな可愛いクレアを、知らないから……



「彼、来たわ。
 ……私達、貴女を驚かせたかったの」


 私達?

 私の背後に手を振るクレア。
 私が驚く、って何?


 クレアにそう尋ねる前に。
 私が後ろを振り返る前に。
 その人物はテーブルの横に立ち、私を見下ろしていた。



「お久しぶりです、オーブリー嬢」



 クレアが私に紹介したい、と言った恋人は。
 私達、もうすぐ結婚する、と言った恋人は。

 カーティス・ブルーベル。
 6年ぶりに会う私の初恋のひと。



 今でも夢に現れて、私を泣かせる……
 私の初恋のひとだった。



 もう見たくない、と思うのに。

 夢から目覚めた後嬉しくて泣いてしまう……
 カーティス・ブルーベルだった。

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