甘く、溶ける、君に。


有無を言わせず、流れるように教室に吸い込まれていく千輝くん。


来い、ということなのだろうか。


私のこと探してたらしいし……私と何か喋ることでもあった? 別に怒ってるわけではなさそうだから、いいけど。


ここで行かない理由もないので私も同じように教室の中に吸い込まれていって。


既に窓際に立っていた千輝くんの近くまで歩いた。



「……遥乃、昨日帰ってこなかった」



私の気配だけを感じ取ったであろう千輝くんは外を向いたまま私とは顔を合わせず言葉を紡いだ。


昨日、は。先輩のところに行ってて、家には帰らずにそのまま今日も登校。


隣だからそれくらいわかるか。帰ってないことくらい。生活音しないもんね。




< 134 / 349 >

この作品をシェア

pagetop