実はわたし、お姫様でした!〜平民王女ライラの婿探し〜
***


 それからエメットは、城内の応接室へと案内された。
 本当はわたしの部屋に連れて行きたたかったんだけど、アダルフォから『それはさすがにダメ』だと諭されたので、百歩ぐらい譲歩してそうなった。

 初めて城内に入るエメットは、応接室のソファに腰掛け、キョロキョロと周りを見回している。


(分かる……分かるよエメット、その気持ち)


 わたしだってほんの数か月前までエメットと同じ反応をしていたんだもの。何だか懐かしくて、新鮮で、仲間を見つけたみたいに嬉しくなってしまう。


「ごめんねエリー、こんな時間に仕事させちゃって」


 わたしとエメット、二人分のティーセットを持って、エリーが応接室へとやって来る。


「まぁ姫様……とんでもないことでございます。こうして姫様の大切なお客様をおもてなしできるなんて光栄ですわ」


 そう言ってエリーは優しく微笑んでくれた。
 エリーは両親への手紙だけじゃなくて、エメットへの手紙や、他の友人達への手紙の取次もしてくれているから、わたしがどれだけ彼等に会いたがっていたかをよく知っている。嫌な顔せずお茶や茶菓子を準備してくれて、とても嬉しかった。


「それにしても、本当に久しぶりだね、エメット」

「ああ。まさかこんな風にライラに会えなくなる日が来るなんて思ってなかったよ」


 エメットはそう言って寂し気な笑みを浮かべる。わたしもつられて小さく笑った。


「それはこっちも同じ。だってわたし、エメットと最後に会った日に唐突にお城に連れてこられたんだよ? しかも『実はあなたはお姫様です』みたいに言われて、本当にビックリしたんだから」


 こんな風にあの頃のことを誰かと話すことは実は初めてな気がする。同情されるのも、かといって馬鹿にされるのも嫌だし、話題にしづらいもの。貴族の皆は何となくわたしの状況を分かっているから、少し触れる程度で別の話に移ってしまうのだ。


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