実はわたし、お姫様でした!〜平民王女ライラの婿探し〜

22.決別

「おじいちゃん!」


 執務室の扉を勢いよく開けば、おじいちゃんは弾かれたような表情でこちらを見つめる。もう真夜中に近い時間だけど、おじいちゃんは未だ文官達を伴って、文机へ向かっていた。


「どうした、ライラ? こんな時間に訪ねてくるのは初めてじゃ……」


 おじいちゃんは初め、そんな呑気なことを口にしていたけど、わたしの剣幕に不穏な空気を感じ取ったのだろう。眉間にぐっと皺を寄せた。


「お前達は下がりなさい」


 騎士や文官達にそう命じ、わたしを部屋の中へと促す。ドアが閉り、二人きりになると、しばらくは無言のまま目を瞑る。


(落ち着かなきゃ)


 怒りのあまり、胸のあたりが燃えるように熱い。だけど、感情に任せて話した結果、伝わらなかったら何の意味もない。
 わたしは何度か深呼吸を繰り返し、意を決しておじいちゃんを見つめた。


「この数か月間、わたしが両親に向けて書いた手紙が届いていなかったの。ただの一枚も。
だけどね、ランスロットを通じた正規ルートを外れて――――ゼルリダ様に奪われた手紙だけが、両親に届いた。ゼルリダ様が両親に届けたから。
おじいちゃん――――あなたを通さなかったから」


 努めて冷静にそう言えば、おじいちゃんは真顔でこちらを見つめ返す。冷たい瞳。普段ならば心折れるだろう視線だけど、今は違う。目を逸らさすことなく、わたしはおじいちゃんを見つめ続けた。


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