実はわたし、お姫様でした!〜平民王女ライラの婿探し〜

30.もう一人の

 夕食の後、お母さんはシルビアから貰ったフレーバーティーを淹れてくれた。少しでもリラックスできるように、って配慮してくれたんだと思う。優しい香りが心を穏やかにしてくれた。


「ライラ様、やはり俺は――――」

「ううん、アダルフォにも一緒に話を聞いて欲しいの」


 固辞するアダルフォをソファに押しとどめ、わたしはお母さんたちへと向き直る。
 本当のことを聞くのはちょっぴり怖い。二人との関係が変わっちゃうんじゃないかって、ずっとずっと不安だったから。
 だけど、このままじゃきっと前に進むこともできない。


(そんなの、嫌)


 覚悟を決めて前を向くと、お母さんはまなじりをそっと緩めた。


「お母さんの妹――――ペネロペはね、お母さんとは違って、とても強い子だった。勉強が得意で、頑張り屋で。子どもの頃からずっと、お城での生活に憧れていたの」

「お城に? もしかして、最初からお妃様になりたかったの?」


 思わずそう尋ねたわたしに、お母さんはクスクス笑いながら首を横に振る。


「ううん。そうじゃなくて、ペネロペは国のために役立ちたいって想いが強くてね。
本当はバルデマー様みたいに文官に目指していたのだけど、女性で文官に登用されるのって貴族の女性ぐらいで、物凄く狭き門でしょう? 平民出身で文官に登用されたって前例も無かったし。
だからペネロペは、お城で侍女として働くことになったの。そうすれば、貴族や王族を支えることが出来る。直接的に国政に関われるわけじゃなくても、自分に出来ることがしたいんだって張り切っていたわ。
家は貴族との関りもある所謂名家だったし、そのぐらいのコネはあったから」

「……そうなんだ」


 お母さんの家族の話は、実は殆ど知らない。
 コクリと小さく頷いて、お母さんは遠い目をした。


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