実はわたし、お姫様でした!〜平民王女ライラの婿探し〜
【先日はライラに会わせてくれてありがとう。

少し会わない間に、ライラがすごく大きくなっていて、とてもビックリしたよ。僕の名前を呼んでくれて、笑顔を見せてくれて、抱っこもさせてくれるようになるなんて……顔を見るだけで泣かれていた頃が嘘みたいだ。本当にとても嬉しかった。
これまでライラのことを大切に育ててくれてありがとう。心から感謝している。


実は近頃、ライラを引き取った方が良いのではないかと、父や重鎮たちが騒ぎ始めている。結婚から三年が経ってもゼルリダに子が出来ず、将来を不安視し始めているらしい。

僕自身、いつかは父を説得して、ライラを自分の手で育てたいと思っていた。可愛い我が子の成長をこの目で見届けたい。その想いは今でも変わっていない。


だけど、君達を本当の両親だと思って、幸せそうに笑っているライラの顔を見て、気が変わった。君達の側で、普通の女の子として愛されながら育った方が、ずっとずっとあの子のためになるんじゃないか――――そう思い始めている。

僕はペネロペを妻にしてあげることが出来なかった。
もしも僕に『誰が妃でも関係ない』と思わせるだけの実力があれば、こんなことにはならなかった筈だ。今頃家族三人で仲良く笑い合って過ごせていたのかもしれない――――そう思うと悔しくて堪らない。

それに、ライラには、僕と同じ重荷を背負わせたくない。
王族としての柵など感じず、好きな人と幸せになって欲しいと、心からそう思う。

幸いなことに、ゼルリダもライラを引き取ることに反対している。彼女が反対する限り、父や周りも強く出ることは出来ない筈だ。

僕はこれから王太子として、ライラが幸せに暮らせる国を作っていこうと思う。ライラやこの国に暮らす皆の幸せのために、全力を尽くしていきたい。

そして、願わくば――――ペネロペが妃になったとしても、誰も文句を言えないような――――そんな自分を目指していきたい。

ライラももう五歳。今後は表立っての面会は控えた方が良いだろう。

だけど、僕は永遠にライラの幸せを願っている。
僕の分まで、どうか娘のことを愛してやって欲しい。


クラウス】



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