実はわたし、お姫様でした!〜平民王女ライラの婿探し〜
「他には? どんな情報を仕入れているのかしら?」

「色々ですよ。貴族達の懐事情に交友状況、婚約や破局の裏事情に、使用人たちに関する小さな情報まで。集めるだけ集めて、あとは取捨選択していくだけです。まあ、最近は放っておいても僕に擦り寄ってくる重鎮たちが増えましたし、情報を得るのはとても容易いことです。これから更に、そういった輩は増えるでしょう」


 ランハートはそう言って苦笑を浮かべる。
 彼がわたしの婚約者に選ばれるであろうことは、最早公然の秘密。わたし自身は即位の準備で忙しいし、将来の王配に取り入ろうとする人間が多いのは当然かもしれない。


「ところで、今日はそんなことを言うためにわざわざ城に来たの?」


 手元の資料をワザとらしく捲りつつ、わたしはランハートにそう尋ねる。

 王太女即位はもう目前。これでも結構忙しい身の上だ。それでもこうして時間を割いているのには、一応理由があったりする。


「理由が無いと会いに来たらいけないですか?」

「それは……そういう訳じゃないけど」


 つまり、今日ここに来た理由は特にないらしい。内心ため息を吐きつつ、わたしはそっと視線を背ける。


「どうされました?」

「別に? 何でもないわ。ただ、ランハートは嘘吐きだなぁと思って」

「僕が? まさか。僕は嘘を吐かないと、何度も申し上げた筈なのに」


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