実はわたし、お姫様でした!〜平民王女ライラの婿探し〜
「おっ……お母さんは? お母さんはわたしのお母さんだよね?」

「ライラ…………」


 両親の元に駆け寄ると、二人は気まずそうに視線を逸らした。わたしの肩を抱きながら、けれど『そうだよ』とは言ってくれない。


「……誠にお伝えしづらいことではございますが、姫様のご生母様は十六年前、既に亡くなっていらっしゃいます。そのため、あなたはご生母様のお姉さま夫妻――――そちらにいるお二人に引き取られたのです」


 騎士の言葉にわたしの目頭が熱くなる。


(そんな……そんな…………!)


 二人がわたしの実の両親じゃないなんて、考えたことも無かった。お父さんもお母さんも優しくて、いつだって愛情たっぷりにわたしを育ててくれて、わたしの自慢の両親だったのに。


「もっとゆっくりとご事情をお話ししたいのですが、申し訳ないことに我々には時間がありません。明日の朝、王太子殿下の葬儀がございます。姫様には我々と共に城に来ていただきたいのです」


 壮年の騎士は気の毒そうな表情でわたしを見遣る。返す言葉が見つからないまま、わたしはその場に立ち尽くした。
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