溺愛前提、俺様ドクターは純真秘書を捕らえ娶る


「俺は『(さかき)』とかでステーキとか食べたいんだよな」


 構わないと言いつつも、やはりご不満の様子。榊とは、彼の贔屓にしている銀座の高級店だ。

「申し訳ございません」と口にしながらも、心の中で小さく息をついた。

 女性が振り返る容姿を持ち、肩書きは心臓血管外科医にして総合病院の院長。

 完璧なスペックの彼……だが、私に対しては少し癖がある。

 容赦なくわがままを言うし、辛辣な言葉が飛び出すことも多々。

 長く付いているからこその甘えだとはわかっているものの、心の中でつい小さなため息をついてしまうことがある。今のように。

 私──小野寺(おのでら)千尋は、ここ、水瀬(みなせ)横浜総合病院で医療秘書として勤めている。

< 5 / 246 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop