【続】酔いしれる情緒


「理由ならありますよ」



ずっと運転に集中していた由紀子さんが冷静に口を開いた。



「清美さん、最近よく春くんの前に現れるんです」

「え。」

「撮影現場、それからテレビ局でも。まるで待ち伏せしているかのように春くんを待ってることもありましたし、楽屋に押し掛けてきたこともありました。」

「押し掛ける…」



チラリと春の顔を伺う。


そんな話1度も聞いてないんだけど、と。



目が合えば、春は へらり と笑った。



あ、今、話聞いてないな、コイツ。

そしてどこか ふわふわ してる気がする。



「まるでストーカーのようなことばかり。だから清美さんがこの件の犯人だと言われてもしっくりきてしまうというか…」

「だとしても狙いはなんだ?」

「さぁ…それは本人に聞いてみないと分からないです。ただ、春くんに好意があるのは確実かと。」

「私情か……面倒だな」



橋本と由紀子さんの会話を後部座席で静かに聞いた。



(好意がある……か)



もしも本当に清美一花がやった事だとしたら


あの写真は私と春の仲を悪くさせる為に撮られたものでもあって、離婚を仕向ける為にやったことなんじゃないかと思う。



(好きだからを理由にして……)



この事が合っているなら、本当なら。



私達は


週刊誌よりもずっと

厄介な人に目をつけられたことになる。

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