【続】酔いしれる情緒


「じゃあそろそろ行きますか!」



頬にあった手が離れ、今度は私の手を掴むとそのまま引っ張りあげられる。



「ちょっと遅めの新婚旅行だね」

「…………うん。」



初めての海外だし
事前にスケジュールだって立ててある。


行きたいところは山ほどあって、全て回るのに時間が足りるかは微妙なところ。



「まずは確か……」

「ねぇ、」



春の手をキュッと握り返して

軽く腕を絡まらせる。


「ん?」と私の顔を覗き込む春にまた酔って。



「ちょっとだけ…2人っきりになりたい」



目線にも、仕草にも。

全てに身体が甘く痺れてクラクラする。


きっともう私は、すでにどこかで、春に外壁を埋められてしまったんだろうなと思った。


こうして触れ合って、胸の奥が疼き、苦しいほど求めてしまう感覚を教えてくれたのは──────他でもない、春なのだ。


そんな彼が今隣にいる。幸福感がこれでもかというほどに溢れて、いっそ苦しいほど。



心を満たすには、あと少し。

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