【続】酔いしれる情緒


「橋本さんに怒られたんだって?」



同じタイミング。


…いや。私が話す前に、春が言った。


私に背を向けて冷蔵庫を開ける春。

私は彼の後ろ姿をソファーから眺めて



「………うん」



見られてないけど、頷いてみせる。



やっぱり知っていた。

というか、知っていて当然だ。


だって橋本が言っていたから。


橋本がここに来た理由は春の忘れ物を取りに。社長だけど一ノ瀬櫂のマネージャーとしても動いている橋本は忘れ物を手に取るとそのまま現場へと戻って行った。


現場は紛れもなくあそこ。

キスシーンを目撃したところだ。


そこに戻る前、この家を出る前。

今日のことは春に伝えると。
橋本は私にそう言って出て行ったから。


だからこそ、春からの連絡はちゃんと知っていたし、帰りが遅くなることも分かっていたけど


いつ帰ってくるか分からなかったとしても、ちゃんと話をしなければと思って待っていたのだ。

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