好きよりも、キスをして
「お前、入学式の日に休んでたよな?」
「え、うん。ちょっと風邪ひいて」
「じゃあ、知らねーのも頷けるわ。澤田見てると、もしかして俺の事を知らねーんじゃないかって。なんか、そんな感じがしたんだよな」
「知らないって……」
いったい何を?
私が疑問を言葉にする前に、静之くんは自身の口を指さした。
そして――
「現実では喋れねーんだよ、俺」
「え?」
「声が出ねーんだ。病気にかかって以来、ずっとな」
すぐには理解しかねる事を、淡々とした口調で言ってのけたのだった。