純心と屈折と/少年に心を掴まれた少年
その5



美しいと言った律也から届く目線…。
その目をユウトも見つめ返した
しばし、二人の間には沈黙が漂った。
だが、二人は目と目で何かを語っていたのかもしれない…。


***


おそらくユウトにしたら、同級生である彼の口から出た今の言葉は、あまりに予想外のフレーズだったのであろう。
角度を変えた言い方をすれば、彼にとってショッキングなコトバだったと…。


たいていの人間からは、”凄い、見事、カッコいいetc”…
まあ、概ねそんな通り一遍の麗句がほとんどで、律也からもそんな想定でいたに違いない。


ところが、あまりに意表を突く、律也からの感想と真顔とどこか思い包まれた目線…。
かくして、青島ユウトの琴線はあっけなく弾かれてしまうのだった…。


***


気が付くと、隣に掛けたユウトとの距離は極端に狭くなっていた。
ユウトが律也に寄って、律也も引きつけられるように寄っていく。


”カラダがくっついた…”


程なくして、二人の体が密着した。
先に手を突っ込んできたのはユウトの方だった。
ジーパンのポケットに左手をそっと…、だった。


律也は心臓が破裂しそうなくらい胸が躍り、緊張し、興奮した。
さらに、彼の指先がズボン越しからすでにその奥へと察するに至り、彼の意識は朦朧となる。


なれど、ここで律也も右手をユウトの履いている、やや汗の滲んだジャージのポケットにしっかりと潜りこませていた。
それは、何故かヌルっとした感触だった。


***


「河合君‥、仲間とココを出た後、戻ってくる。それで、いいかい?」


そう切り出したユウトは顔がやや紅潮して、律也にも彼の高揚感が伝わってきた。


「わかった。ココで待ってればいいか?」


対する律也もユウトの目をじっと見つめながら小声で確認した。


「うん。すぐだから…」


ユウトは長椅子からすっくと立ちあがると、またニコッとして、仲間の元に駆けていった…。
< 14 / 43 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop