純心と屈折と/少年に心を掴まれた少年
その6



「おにいちゃーん!早く花火見に行こうよー!」


ここでカオリちゃんの大きな声が届いた。


「はは、カノジョを待たせちゃ悪いから、また…」


「うん、また…」


ここで律也とユウトは3人の元に戻った。


「ああ…、お二人とも、すいません。子供の相手してもらって」


「いいのよ。あなたもユウトと”大事なお話”、済ませたんでしょうし…」


ヨーコというユウトの年上の”カノジョ”が、やや薄笑い気味に意味深な言葉を律也に浴びせると、もう一人のチヅルも口元を緩ませ、じっと律也を観察するように見ていた。
その脇でユウトは軽くため息をついて、年上の女性にやれやれという目つきだった。


***



そんなオトコ連中を横目に、ヨーコはチズルと目で何かを語りあったあと、一転、ガラッと声のトーンを上げてカオリちゃんに声をかけた。


「さあ、おにいちゃん、戻ってきたよ。カオリちゃん、バイバイねー」


「バイバーイ!ヨーコおえちゃん、チズルおねえちゃん、お話してくれたありがとう!」


5人は手を振りあってここで別れた。
カオリちゃんの手を握って歩く律也の足どりは、思いのほか軽やかだった…。


この夜のカオリちゃんを除いた4人の男女は、翌週、再び顔を揃えることになる…。
そして、それは、律也の”その先”を大きく決定つけるターニングポイントの入り口でもあった…。


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