結ばれない二人
「・・・切っただけ。」
そう言って慌てたように手を引いて俺から逃れようとする朱莉。
いつものように俺はとっさに朱莉の手を強い力で握り返す。

いつか華奢な朱莉の手を壊してしまうかもしれないと思いながら、朱莉の手のケガを見る。

「大丈夫」
そういう朱莉。
大丈夫じゃない。

朱莉の傷は大丈夫じゃない。
俺が、大丈夫なわけない。

朱莉の傷は・・・大丈夫じゃない。
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