星と月と恋の話
「…はぁ…」

「…何だか元気ないですね」

「…そう見える?」

「はい」

結月君と歩いて一緒に帰りながら。

私は、気分が重かった。

結月君のせいじゃないよ?

さっき、隆盛に言われたこと…そして。

昨日真菜や海咲に言われたことが、頭の中をループしてる。

「さっきから、溜め息ばかりついてますよ」

「そんなことないよ…」

「いえ。さっき『はぁ』で、本日通算8回目ですから」

何処から出てきたの、その8という数字は。

よく数えてるわね。

「別に…何でもな、」

「お友達に何か言われたんですか。…僕と交際していることについて」

「…」

何でもないって、今言おうとしたのに。

しかも。

「…あ、図星なんですか?」

結月君は私の沈黙を、肯定の意だと解釈したらしい。

「うっ…。か、カマをかけたの?」

「いえ。そんなことだろうと思ったので…。本当にそうだったんですね」

「…皆、酷いのよ。どうしてあんなに…結月君のこと悪く言うの」

結月君がどんな風に言われていたか、とても本人には言えな、

「あんな冴えない奴と星さんは、全然釣り合わないだろうって?」

…結月君。

君、もしかしてこっそり、盗み聞きしてた訳じゃないけどよね?

「自分が他人にどういう評価をされているかくらい…大体分かります」

とのこと。

自分はそんな風に思われてると思ってたのね、結月君は。

「そりゃいきなりクラスの陰キャと、星さんみたいなクラスの陽キャ代表みたいな女子が付き合い始めたら、誰でも怪しむでしょう」

「そんな…」

「星さんだって、これが星さんではなく、お友達の…木村さんだったら」

え、真菜のこと?

「彼女がいきなり、僕と付き合うことにした、なんて言い出したら…星さんも今のお友達と同じ反応をしたと思いますよね」

「…そうね。…そうかも」

否定出来ない自分がいる。

私が結月君と付き合うことを決めたのは、あの罰ゲームの三ヶ月があったからだ。

あれがなかったら、私は未だに、結月君の良さに気づかないままだっただろう。

「皆、誤解してるだけなのよ」

私はそう言った。

「誤解?何を?」

「結月君のこと」

かつての私のように、結月君を見た目だけで判断し、つまらない奴だと決めつけている。

本当はそんなことないのに。

「結月君は良い人なのに、皆知らないなんて…凄く勿体ないわ」

「…そうですかね…?」

「そうよ。結月君は、もっと自分の健全さをアピールしても良いと思うわ」

結月君が謙虚な人だっていうことは、百も承知だけど。

それにしたって、もっと自己アピールしても良いと思う。

そうしたら、きっと皆も分かってくれるのに。

…あ、でも。
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