星と月と恋の話
そして、次に私がしたことは。

放課後、私は真菜と海咲の三人で、お茶に寄って帰ろうと提案した。

ごめんね結月君。一緒に帰れなくて。

でも今日、水曜日だから。

例のスーパーの特売日だから。

どっちにしても、もう水曜日に君と一緒に下校するのは遠慮したいわ。

そんな訳で、今日の放課後は女子会。

たまには良いわよね。

私達は、それぞれ飲み物と、このお店名物のフレンチトーストを注文した。

え?夕飯前なのに、そんなもの食べて大丈夫なのかって?

甘いものは別腹だから。セーフよ。

誰が何と言おうとセーフなのよ。

注文したフレンチトーストを食べながら、私はその話を切り出すことにした。

「ねぇ、ちょっと二人に相談したいんだけど」

「え、何?」

「三珠クンと別れるの?」

ずっこけるかと思った。

下世話にも程があるわ。

「別れないわよ。失礼ね」

「じゃあ、どうしたの?」

「バレンタインよ、バレンタイン。どうしようかなって」

2月。恋人達の祭典。

そう、バレンタインデーだ。

あと一週間で、2月14日を迎える。 

バレンタインのチョコを用意するなら、今週末に動かなきゃならない。

そんな訳で、二人にも相談しようと思って。

「バレンタインかー。そういや、そんな時期だよね」

「私も、今年は自分にマイチョコ買おっかな〜」 

二人共、呑気なものだ。

私にとっては結構重要な問題なんだからね。

そもそもバレンタインというイベントに対して、結月君がどんな反応をするのか分からない。

それが一番ネックなのよ。

いっそ「バレンタイン楽しみにしてるから」と言ってくれた方が楽。

「三珠クンも、星ちゃんからのチョコに期待してるんじゃないの?」

「そうなのかな…。全然そんな風に見えないのよ…」

むしろあの人、バレンタインを知ってるのかしら。

まずそこからよね。

如何せん、世間知らずなところあるから…。

イベント事にも疎いタイプだしなぁ…。

バレンタイン当日にチョコレートあげても、「いきなりどうしたんですか?」とか言いそう。

うん、きっと言うわ。

これまでの結月君の交友関係から察するに。

結月君にバレンタインチョコレートをあげた人なんて、まず滅多にいなさそうだし。

って言ったら、失礼かもしれないけど。

あ、でも結月君のところって、お母さんと仲良いし。

もしかして、お母さんからチョコレートもらったりしたことがあるのかな。

お母さんからのチョコレートって、男の子にとっては、バレンタインチョコの一つにカウントされるものなの?

…分かんない。

結月君のお母さんも結月君のお母さんで、バレンタインを知っていそうには見えないしなぁ…。

…うーん、悩ましい。

かと言って、バレンタインをスルーするにはあまりに惜しかった。
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