星と月と恋の話
…色々と、家庭用ゲームに挑戦してみたけど。

結局、どれも結月君の性には合わなかったみたいなので。

「はい、次結月君の番」

「そうですね…。…じゃあこうしましょう」

「あ」

いっぱい持っていかれちゃった。

リアルのボードゲームを引っ張り出してきて、リバーシを始めたのが10分前。

さっきまでの酷い戦いが嘘のように、結月君は輝いていた。

リバーシ上手いわねあなた。

あっという間に、盤面が真っ黒。

リアルのゲームだと強いんだ。

「私に勝ち目が見えないわ…」

「リバーシならまだ、弱い方ですよ。将棋とかだともっと強いです」

そうね。いかにも強そうだわ。

将棋はね、私がルールを知らないの。

将棋盤も持ってないし。

「でも、師匠はもっと強いんですよね…。涼しい顔してる癖に。勝てた試しがなくて…」

…何?結月君には、将棋の師匠がいるの?

わっかんない人だわ。我が彼氏ながら…。

「…それにしても、春休みね」

「…そうですけど。それがどうかしたんですか?」

「いや、4月になったら、私達も二年生になるんだなぁと思って…」

「そうですね…。あの酷い点数でも、ちゃんと二年生にはなれるんですよね」

ちょっと。何余計なこと言ってるの。

そういうことは言わなくて良いの。

「あんまり考えないようにしてるけど、クラス替えあるのよね」

「そうですね」

あ、結月君もちゃんと分かってたんだ。

「別々のクラスになっちゃったら、どうしよう?」

「僕は別に…。運命を受け入れますけど」

さっぱりしてるわね。

まぁ、結月君ならそうよね。

未練がましく、「同じクラスなら良かったなぁ」とか言わない。

「別のクラスになっても、連絡は取れますし。会おうと思えば会えますからね」

「そうね」

良かった。

もしお互い、別々のクラスになっても。

私達の関係は、変わらず続いていくのね。

少なくとも結月君は、終わらせる気はないんだ。

それが分かって良かった。

「…何にやにやしてるんですか?」

「別に、にやにやなんてしてないわよ」

「ですよね。あの成績でへらへらしながら進級は、いくらなんでも危機感がなさ過ぎますから」

「辛辣〜っ!」

「それと、僕の勝ちです」

「うわ、盤面真っ黒!」

いつの間にか、一点の白もなくなってる。全て真っ黒。

全部取られることって、なかなかなくない?

「油断してると成績もこうなりますから、気をつけてくださいね。三年生になるとき、唯華さんだけ留年なんてことになったらさすがに笑えないので」

「だ、大丈夫よ!」

「…だと良いんですけど…」

何で心配そうなのよ。大丈夫よ。

…来年は、もうちょっと勉強…頑張ろっかな。
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