星と月と恋の話
週末明けの、月曜日。

学校に着くなり、私は真菜と海咲に質問攻めにされた。

「星ちゃ〜ん。どうだった?」

「え?どうだったって?」

挨拶より前に、いきなりどうだった、って。

「決まってるじゃん。初デートの感想だよ、初デート」

初デート…あぁ。

土曜日の、結月君とのデートのことね。

「映画館行ったんでしょ?楽しかった?」

「ってか、あの三珠クンと話続いた?」

「三珠クンって私服どんな感じなの?」

「映画は何観たの?」

二人して、押しが強いって。

「はいはい、ちょっと待ってよ。話す、話すから」

私は鞄を机の横にかけて、席に着いた。

まずは、デートの行き先の話からしなきゃならないよね。

「それがね…。映画館行く予定だったけど、急遽変更になったの」

「え?何で?」

「事前に映画館行こうって言ってなかったせいなんだけど…。行き先、自然公園になった」

「えぇぇぇ!?何で?」

何でかなんて、私が聞きたいわよ。

まぁ、さっきも言った通り、私が事前に言ってなかったせいなんだけど。

「自然公園でコスモス畑見てたわ」

「何それ〜!つまんなさそう」

って思うよね。聞いただけだったら。

私だって、最初自然公園に行こうって言われたときはそう思ったよ。

「それ、三珠クンが提案したの?」

「当たり前じゃん」

私からそんなところには誘わないよ。

そもそも、選択肢の一つにも入ってなかった。

思いもよらないデートスポットだったんだから。

「服は?三珠クン何着てた?超ダサTシャツとか?」

「いや…。なんか和柄の上着とシャツ着てて…」

「何それ…?さすが三珠クン。センスない」

海咲も真菜も、けらけら楽しそうに笑っていた。

二人共、他人事だと思ってさぁ。

でも…これだけは言っておく。

「コスモス畑は、普通に綺麗だったんだよ。それに、結月君がお弁当作ってきてくれてて。それがびっくりするほど美味しくて…」

「自然公園って。お花畑デートとか。さすが三珠クン」

「よく頑張ったね〜星ちゃん。キツかったでしょ、よしよし偉いね〜」

と、真菜に頭を撫でられた。

ちょっと。話聞いてよ。

結月君の意外な特技が明らかになって。出汁巻き卵が美味しかったんだってことを、ちゃんと…。

「頑張った星ちゃんに、今日の学食は奢ってあげるよ」

「え、あ、うん…」

キツかった…とか、頑張った…とか言うけど。

振り返ってみれば、意外とそうでもなかった…ような。

気がしたけれど。

二人が労ってくれるものだから、私はそのまま、流されるまま曖昧に笑っておいた。
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