ガキ大将と猫(溶け合う煙 side story)

1.苦手な先輩

「あ、彼女は私の同期です。待っている間一緒に話をしていたの。佳代(かよ)、こちらがトーマスさん。」

今朝、同期の梨沙(りさ)がライターを忘れ、スモーキングエリアで貸してくれた外国人とこれから会うというので、待ち合わせの会社のエントランスまで好奇心からついてきた。

「は、、初めまして。」

小柄な私は思いっきりトーマスさんを見上げた。
ハリウッド俳優見たいな容姿に見惚れてしまう。

「こちらこそ初めまして。ぜひ、ご一緒にと誘いたいのだが、今日は理沙を口説かなければならないんだ。申し訳ないが、この後はご遠慮願えるだろうか?」

えっ!?
外国の人って、こんなにもストレートなの!?

「え、あ、もちろんです。私はこれで!」

そう言うと、恥ずかしさとあまり駅へと向かって猛ダッシュをした。

…びっくりした!
さすが梨沙!あんな素敵な人にあれほど大胆に口説かれるなんて凄い!
確かCEOって名刺に書いてあった!
本物の王子様じゃんっ!!!

梨沙は小柄で童顔な私と違い、スラットして大人のいやらし過ぎない色気がある。
その上、真面目で努力家だ。

最近、梨沙の浮いた話なんてなかったので、自分のことのように嬉しく思う。

『ドンっ!!』

…えっ?

『ガチャガチャーン』

痛っ…。

慌てて駅に向かっていたので駅から来た人とぶつかってしまい、跳ね返った勢いのまま尻もちをつく。
転んだ拍子に鞄の中身を歩道にぶちまけてしまった。

「…っぁた。」

「相変わらずお前は落ちつきがないなぁー。ちょっとは周りを見ろよ。」
< 1 / 12 >

この作品をシェア

pagetop