ガキ大将と猫(溶け合う煙 side story)

2.意味がわかりません!

「マスター、取り敢えずビールと砂肝」

「あいよ!」

行きつけのお店なのか、武藤先輩はお店に入るなり、空いているカウンター席に座った。

「山城、足届くか?ちゃんと座れるか?」

口を開く度にからかってくる。
いい加減鬱陶しいのでやめて欲しい。
こっちだって、好きで童顔チビをしているわけじゃない。どう頑張っても変えられないものがある。

「何度も言いますが、ちゃんと成人してますし、椅子も座れます!マスター私もビールで!」

「あいよっ!」

「お前、ビール飲めるのか?無理せずオレンジジュースでもいいぞ。」

「ビールで大丈夫です!」

軽く怒った口調で言うと、くすっと先輩が笑う。
普段、先輩の笑顔なんて見ないので、一瞬キュンとした。

社内での先輩は本当に小さなことで文句を言ってくる。
例えば夏に髪をアップしてみれば、『うなじが寒そうだ。風邪ひくからやめろ。』とか、
社内の人と雑談をしていると『飲みに行く相談する時間があるなら仕事しろ。』とか。
一番ひどいのは、書類についていた付箋を私が確認する前に『むかつく。』と言って破り捨てたこと。
書類を持ってきてくれた社員に破られた事情を話し、付箋の内容を後で確認すると、『大したこと書いてないから大丈夫。』と言われ問題にはならなかったが…。

その度にイラついた表情で近づいてくるので、眉間にしわのよった顔しか見たことがなかった。
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