竜に選ばれし召喚士は口説き上手な外交官に恋の罠に落とされる

13 ぬくもり


 ぽろぽろと涙をこぼしている間に、彼はまた深い眠りに入ってしまったようだった。長くて規則正しい呼吸を繰り返している。

 ナトラージュはやっと抱きしめられていた彼の腕から抜け出すことに成功して、よろよろと立ち上がりベッドの下に落とされていた下着を探し出して気怠い体に鞭を打って置いてあった服に着替えた。

 一度だけ、寝ている彼のことを振り返った。全裸だというのに、ただ横たわっているだけで芸術品のようだった。大きな手は、何かを探しすようにさまよい動いている。さっきまで自らの腕の中にあった温もりを、探している。

 それを見て、ひどく悲しくなった。ああして探しているのは、抱きしめていたナトラージュではなく別の女性だから。

 彼への思いを振り切るように、扉を開けた。そこに居たのは、グリアーニの部下で王太子の近衛騎士であるはずのジェラルディンだった。

 いつものような無表情は変わらない彼女なのに、今はどこか複雑そうに見える。

「……ジェラルディン。どうして、ここに?」

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