竜に選ばれし召喚士は口説き上手な外交官に恋の罠に落とされる

18 夜明け

 深い森の中、前を行く青い光を放つシルフィードが振り返って、人差し指を唇に当てた時にそれは視界に入ってきた。

 彼女の仕草の意味するところを知り、ナトラージュは慎重に足を止めて、後に続いていたラスは急停止してから地面へと降り立った。

 森の中で少しだけ開かれたその場所へ、極力音を立てないように近づく。

 影の中に溶けこみそうな全身黒ずくめの五人と、その前に縄に繋がれ憔悴した様子の初老の男性が見える。さっきラスが言っていた例の暗殺集団闇鴉たちと、人質の大臣だろう。

「驚いたな。ディレイン。まさか、一人でここに現れるとは」

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