Honey Trap
そういえば、以前にそんな話をしたような気もする。
期待の込もったキラキラとした視線が痛い。
ここは「行く」と返事をした方が得策だろう。
無闇矢鱈と和を乱すものではない。
と、また打算的な心が働く。
「日曜日か…」
特に予定があるわけではないけれど、即答はせず多少の迷った素振りを見せる。
そうすれば必ず重ねて誘ってくるから、そこで初めて同意をする。
「え、いいじゃん。なにもないなら、たまには清水さんも行こうよ」
「うん、…じゃあ、行こうかな」
「ほんと?決まりだね」
「清水さんも来てくれるの?マジ、楽しみ」
人は簡単に手に入らないものほど、欲しがる生き物だから。
喜んでいる里央たちを見ていると、反対に私の心はすーっと冷えていく。
なぜか一番嬉しそうにしている和田くんは、よほど美化されたフィルターを介して私を見ている。