Honey Trap



―――それは、日曜日の夜のこと。



「せっかくのパーティーなのに残念ね」


テーブルに並んだ手作りのご馳走を前に、少し寂しそうにママが呟いた。


毎年恒例のクリスマスパーティーを我が家だけで行うのも、今年で5回目。

男が大学進学し、お隣も海外赴任してしまってからは両家間の交流はないに等しい。


ママからお誘いを受けた男は、先週告げられた通りこの場にはいない。


「まぁまぁ、職業柄、仕方ないさ」


パパの言う通りだ、と思うのはただの願望だろうか。

ここ最近、男の周りにちらつく女の影が頭を過る。


今日は普段忙しいパパもママも、クリスマス当日じゃないけれど親子3人揃って食卓を囲む。

パパとママからプレゼントを貰って、私もそれぞれに細やかなプレゼントを渡す。

温かな家族の一時。


客観的に捉えれば捉えるほど、虚しさが募っていくのはどうしてだろう。


どうしたって、たったひとつを渇望してしまう。



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