Honey Trap



ふらり、と部屋を出ていったと思ったらシャワーを浴びていたのか。

少し湿った髪とラフに身に纏った部屋着が、男の整った容姿と相まって酷く扇情的で危うげな雰囲気を醸し出している。


「親御さん、心配するだろ」

「大丈夫よ。最近2人とも遅いから」


共働きの私の両親は、近頃は仕事が忙しいらしくここ1ヶ月くらい帰りが遅い日が続いている。

早くて9時過ぎってところだ。

時刻は7時を回ったところ。

まだまだ急ぐ時間ではない。


「高校生なんだから…」

「なによ、まだそこまで気にする時間じゃないでしょう?」


もう用は済んだから面倒な私を早く帰そう、ということなのか。

男のその言い種に納得がいかない私は、無性に苛立って反論を口にする。


「それに、」


私は男―――私の家の隣家に住む幼なじみを再び振り返ると、続ける。


「ここにいたのがばれても、逆にママたちは安心するんじゃない?」



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