社長は身代わり婚約者を溺愛する

第1話 お見合い相手は

人生、ちょっとした隙間に、チャンスが巡ってくる事もある。


「ふぅー。お母さん、このラインは終わったよ。」

汗を拭き、隣のラインにいるお母さんに報告する。

「じゃあ、今日はもういいわよ。」

「ううん。やる事があるんだったら、もっとやるよ。」

「そう?じゃあ、お願いしようかな。」


町の中にある小さな工場。

ここで家族ぐるみで、タオルを作っている。

と言っても、ここの所赤字続きで、従業員は全員解雇してしまって。

残ったのは、お父さんとお母さんと私だけだ。


「糸を巻く方やってちょうだい。」

「分かった。」

仕入れた糸を織る為に、一旦巻く。

タオルを作るのに、必要な工程だ。

「ごめんなさいね。本当はもっと遊びたいでしょ。」

お母さんが、私の隣にやってきた。

「ううん。私もう25だよ?仕事に邁進しないでどうするの。」

「そう言って貰えると、物凄く助かるわ。」
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