社長は身代わり婚約者を溺愛する

第2話 嘘の始まり

「飲み物、どうしますか?」

メニュー表を信一郎さんから、スッと渡された。

「私は、カフェ・ラテを……」

値段を見ると、800円もする。

「いえ、コーヒーをお願いします。」

それでも、600円。

どうしてコーヒー一杯が、こんなに高いの⁉


クスッと笑った信一郎さんは、ウェイターの人にコソッと頼んでいる。

お金持ちって、そんな風に頼むんだ。

一人カフェ・ラテとかコーヒーとか、騒いでいた私が恥ずかしい。


やがて運ばれてきた物は、カフェ・ラテだった。

「あの……これ、」

「どうぞ。飲みたいモノを飲むのが、一番いい。」

「……有難うございます。」

これで800円確定。

今日は他に何も買えない。


「芹香さんのご趣味は?」

私は、呑気にカフェ・ラテを飲んでいる。

「芹香さん?」

「あっ、はい!」

危ない。今の私は、芹香だった。
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