悪党みてぇな貴族だった俺、転生した現代で小動物系美少女をふる
三章 その直後から一週間のこと
 沙羅を保健室に預けた理樹は、後を同性のレイに任せて拓斗と共に保健室を出た。
 どうしてか、いつものようにこちらを指差して「一学年で一番の美少女にアタックされ続けている人だ」という者はなかった。

 廊下ですれ違う生徒たちも、気にしないように視線をそらしたり、露骨に「そういえば今日の夜に面白いテレビが――」と無理やり話題を口にして、友人グループとなんでもない風を装って通り過ぎて行く生徒もいた。

 運動場で行われて勝負については、既に全校生徒に知られたようだが、不思議と誰もが口を閉ざしているようだった。
 
 今日は部活動が出来る気分じゃない。それを拓斗に告げると「なら帰るか」とあっさり返答があった。
 教室に行くと、先に戻っていたクラスメイトたちが待っていて、何故か開口一番「お疲れ様」とだけ言われた。それ以上の言葉はなく、突っ込んだ質問をされることもなかった。


 変だなと思いながらも帰宅した翌日、沙羅は学校に来なかった。
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