悪党みてぇな貴族だった俺、転生した現代で小動物系美少女をふる
四章 日差し差し込む廊下でのこと
 もう何度目だろうか。というか、いつまで続ける気だ?

 理樹は、沙羅のもう何度目かも分からない『ぎゅっとします!』作戦が失敗に終わったのを見届けて、そう思った。

 自販機で紙パックのジュースを買って戻ろうとしていたところ、どこから見ていたのか、後ろから彼女が飛びかかって来たのだ。しかも、どうも考えなしにやったらしい、ということも見て取れた。

 というのも、沙羅は飛びかかってようやく、自分が腕の中にアンケート用紙の束を抱えていると思い出したようだ。「ああああ忘れてたッ」と急ブレーキをかけたと思ったら、つまづきかけてそれを廊下にぶちまけたのである。


 アンケート用紙の最後の一枚が、滑るように廊下に落ちたところで、理樹は目の前の惨状を改めて目に留めて頭が痛くなってきた。

 そばを通り過ぎて行く生徒たちはチラチラと目を向けるだけで、足を止める気配はない。あの運動場の一件以来、『二人の邪魔はしない』という暗黙のルールが出来たらしく、それもまた全然嬉しくない気遣いである。
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