NGなきワル/バイオレンス長編作完全版!👉自らに過酷を課してのし上がったワルの非情とどうしようもない”ある焦がれ”…。
その4



「うむ…、そうだったな。何といっても、第一は人だ。それがあって、あの年で資金も調達できたし、稼ぎの土台も得た…」

武次郎がそう言うと、ノボルは小さく頷いて表情を和らげた。


***


リトルブラック…!
中学を中退し、金貸しをベースとした短期立替え商売を展開、横浜市内の界隈で暗躍していた幼き大打兄弟を、周囲はそう呼称した。

その原点となった6年前…、彼らが親戚の家を飛び出した時、その身には二人合わせて25万円の所持金があった。

育ての親と言ってもいい父の義理の兄に、なんと年利10%で家を出る支度金がわりに何とか用立てさせたのだ。


***


その説得手法は極めてシンプルだった…。

”あなた方からしたら、所詮自分たちは居候だ。そこで、現実です。食べ盛りの子供6人が4人になるのだから、毎日の出費が楽にはなる。その分を、くれとは言わないから貸してもらいたい”…と。

だがしかし!
それは頼むというより、クロージングであったと言ってよかった。
中学生が50代の大のオトナを、その足元も冷静に見据え、大胆な交渉術で落とす…。

一体、そこまでを成せる中学生二人を生んだモノとはなんだったのか…。


***


キーワードは、モア・ヒート、モア・クール…。
濃たる執着という情熱を以って、冷静に冷淡に人を見切る眼を宿すこと…。
その目線を日常のスタンスに透過させること…。

”それ”に徹せたが故、この兄弟には大人でも捉えられないほどの”人の芯”をも見透かすことのできる、言わばX線機能をこの年で持ち得るに至ったのだろう…。





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