親が体験した怪奇譚/短編ホラー集ー家族愛編ー

第4話/目チカラの少年

その1


私は20代後半で起業しましたが、リーマンショックでドカンとやられ、気づいたら膨大な借金を抱えてやむなく自己破産…。

その後、コンビニや宅配便のアルバイトを掛け持ちして青色吐息の極貧生活の最中、一念発起でジャーナリストの道を目指しました。

一貫して、ワーキングプアに甘んじる若い女性にスポットを当て、地べたを這いつくばりながらも、ささやかなオンリーハッピーをゲットするまでの姿を伴奏者のスタンスでつづりあげる…。
そんな執筆活動を地道に続けています。

こういったメインタッチの取材の傍ら、私は取材対象すべての人に”あること”を尋ねるのが習慣となっています。
それは、『あなたのお父さん、お母さんが体験したショッキングだった告白、信じられない事実を明かされたことはありませんか?』という問いでかけでした。

子育て中には、子供に知られることをかたくなに避けてきた、過去に体験した真実の暗部…。
往々にしてそれは、過ちと後悔を内包する場合も多く、自らが年を重ね子供が成長し大人になって、おのずと自らの教訓を子に伝える告白の機は熟します。
そしてそれは、どこか自らの懺悔の念も同居させたものとして…。

その中には、世にも不思議な怪奇体験を孕むケースもまれにあります。
実は、私もそのまれな体験を持った親から、ごく最近になって告白をされたのです…。

中里ミチヨ(38歳)


...


”我が家の珍品にまつわるエピソード”

それは、私の母が小学校5年生の時、国語の授業におけるある作文のテーマだったそうです。

家から持参した”珍品”をクラスのみんなの前に見せて、作文を読み上げる…。
私の母はその作文の授業で、ある転校生が学校に持ってきた珍品をめぐった、とても不思議な体験をしたと言うのです。


...


その日、母は急に私の住む都内のアパートを訪れたのです。
お互いの近況報告をひと通り済ませると、母はおもむろに切り出しました。

「ミチヨもだいぶ落ち着いてきたみたいだからね…、今日は聞いてもらいたことがあるわ。ずっと前から話そうと思ってきたことなのよ」

母がこう言って改まるのは珍しいことでした。

父と離婚して10年以上が経過し、自己破産した私も何とか一段落のことろまでたどり着いた今、何か伝え残さなければならないことがあるんだろう…。
そんな思いは伝わりましたが、まさかあんな体験が母にあったなんて…。

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