とことわのその ― 獣と絡まり蔦が這い ―【更新停滞中】
そこからはもう無意識に、無我夢中に、自分からも舌を絡めていた。
水音が増し、すべてが潤みはじめる。

「由紀ちゃん。俺の名前、呼んで」

「な、んで……いま」

「聞きたいから」

「……啓吾」

邑木さんが笑みを零し、ふたたび唇が重なった。


舌と舌が生き物のようにもつれあう中、わたしはそのやわらかさに絶望した。

この(ひと)といたら間違いなく堕ちていく。

はじめてキスが、こんなに気持ちのいいものだと知ってしまった。

ここに気持ちはないのに。
ただの、ごっこ遊びなのに。

「あっ……」

ワンピースから滑り込んだ大きな手に、躰じゅうの熱がぶわりと上昇した。
肋骨をなぞった指が上へ、上へと上がっていく。

「今日はがんばるから。由紀に忘れられないように」

邑木さんの影に覆い被された、わたしの躰。

もどかしさとむず痒さでいっぱいになった躰は、そこから先を拒みはしなかった。
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