とことわのその ― 獣と絡まり蔦が這い ―【更新停滞中】
「え、邑木さんのマンションに住んでんの? まじで?」

開店前のバーカウンターに、康くんの驚嘆の声が響く。
ラムレーズンアイスをスプーンでつつき、わたしは小さく頷いた。



――ちょっと、邑木さんとつき合ってみようかな、と思って。

重い感じじゃなくて、ノリで。気分転換、みたいな。

そう、お互いにそういう感じで。
ちょっとつき合ってみようか、みたいな。

それでいま、邑木さんのマンションに住んでるの。
実家から出たかったし。ちょうどいいかなって。



邑木さんには婚約者がいる、ということを引っこ抜き、出来るだけ軽い説明をした。
今の生活について康くんに黙っているのは、隠し事をするようで嫌だったけれど、正直にすべて話すのも気が引けた。

いくら婚約者の公認でも、いくら結婚前でも、それでも邑木さんとわたしの関係について胸を張れはしない。


しどろもどろで不自然な話し方になってしまったけれど、康くんは騙されやすいので、そこは大丈夫だろう。

康くんはきっと、呆れている。
ひーくんと少し前に別れたばかりで、なおかつニートなわたしが邑木さんのマンションに転がり込んでいるなんて。

いまのわたしはマイナス要素だけで、きれいに無様に構成されている。
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