純×恋(じゅんれん)

「今更私とでは，新鮮に感じませんか？　私と出逢ったこと，何の意味もないことにしてしまいますか？」



ーそんなの，寂しいです。

訴えかけるように，純は恋を見つめる。

いつの間にか，純の拳がぎゅっと握られていた。

根負けした恋は，片手をおでこに添え，はーーーと息を吐いてしゃがみこむ。



「恋くん？」



純が心配そうに恋を上から覗き込んだ。

それを見上げて，恋は口の端を持ち上げる。

どうせここに来たんだから。

金の夫婦の卵(ゴールデンカップル)を目指すのは義務みたいなもの。

そう，だから，これはただ，それだけ。

恋は誰に聞かせることもなくそう考えると



「じゃあ，もう少しまともに上位狙う？」



腑抜けた笑顔を純に向けた。

純が瞳を輝かす。

(そんな顔，出来たんだ)

案外子供のようなはしゃぎ方をする。



「是非！　あと少しだけ，頑張ってみましょう！」



ー掴めないひと。

純はまた一際大きく笑みを浮かべた。

自分達が選ばれることは，殆どあり得ない。

選ばれては困ると思うこともある。

だから，恋は上位なんてぼかした言い方をした。

結婚なんて，あんまり現実味がない。

けれど，自分の側で微笑む彼女のために，少しくらい頑張ってみてもいいかと恋は思った。



「ん，了解」



そんな青春も，悪くない。