純×恋(じゅんれん)
この学園の特殊さは,入学生に向け,再度この2人によって語られる。

セブンオーシャンによって生み出された,デステニーという"マッチング"システム。

それによって選ばれた男女2人がペアになり,寮で共同生活をし,この高校独自の課題をこなすのだ。

見ず知らずの異性,警戒することもあるだろうが,そこはほんの少しだけ安心できる。

過度な接触が起きると,部屋に設置されているセンサーが大きく鳴り響き,尚且つ減点となるからだ。

この学園のシステム,またただでさえすごい経歴をもつ2人が,わざわざこの学園を創立した理由はただ1つ。

デステニーによって組まれた120組のうちのたった1組に



『世界一の結婚をしてもらうためだ!』



今でも耳の奥で,鮮明に鳴り響く。

選ばれた2人は卒業と同時に入籍。

思い出すだけでも,また胸がとくりと高鳴った。

それだけでもなく



『そして,もうじき引退する私達の後を継いで,社長になってもらう!』



そんな特典もついていた。

この学園は"一攫千金婚高"なんてあだ名を付けられ,地位や資産を目的としたたくさんの生徒が集まっている。

2人1組のペアは夫婦の卵(カップル)と呼ばれ,その中でも。

金の夫婦の卵(ゴールデンカップル)と呼ばれるその特別な1組がどうやって決められるのかと言えば。

3年かけてセブンオーシャンの社員達に選出されるのだ。

カップルのチェンジや棄権も可能。

2年次になると普通科と結婚科で学科が別れるので,そこでどれだけの人が普通科へ移るかもポイントとなるのだと思った記憶がある。

入学式の日,純は相手が誰であるかよりも,
学園長の願い



『真実のカップル,運命の恋』



そんな言葉に心を踊らせていた。

一攫千金婚高。

純が狙っているのは,『婚』ただ1つ。 

それ以外はただのオプションでしかない。

そう思っていた純は今,また1つ人生の岐路に立たされていたのだった。
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