世界一可愛い私、夫と娘に逃げられちゃった!
「事実を受け止めろ。結花《《おばさん》》。現に全然できてないじゃないか。勤務態度も、ルールも、仕事に対する姿勢も、常識のなさも、家のことも。何度言えば分かるんだ? まだ自分の立場が理解出来ないのか? 慰謝料支払う立場で、家族に見捨てられるフラグ立ってるのに。きちんとやれば社長は戻ってくると言ってるだろ? ――いつまで《《お姫様気分》》とか《《被害者》》でいるんだ? キミはここの制服を着たただのスタッフのおばさんだ」 
 尾澤強く言い切るような口調で、結花に現実を突きつける。
「ひ、酷いよぉ……ゔぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ん」
 結花は机に突っ伏すように泣きわめく。
 おばさんという単語が刃のように突き刺さる。
 もうお姫様じゃない。そんな年でもないし、立場でもない。
 いくら依田悠真の妻とはいえ、ここではスタッフの1人。
 誰も特別扱いしてくれない。みんな容赦ない。だって働いたことないもん。そんなのはもう誇りに思うことでも、自慢できることでもない。
 今まで目をつぶってもらってたことが、ここでは通用しない。
 目の前にある常識をはかるテストでほとんど答えられていない。それが現実。
 周りからよく思われてないのも事実。
 いつまでも世界一かわいいゆいちゃんでいたらダメなの?
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