世界一可愛い私、夫と娘に逃げられちゃった!
 杖ついてるってことは足悪いんだよね?
 仕事できなさそう。よく社長になれたね。
 どうせ親のコネでしょ?

「あー、覚えてないかー、呉松さん。ほら、同じ中学校だったじゃん。あの時はいっしょによく遊んでたよ。浅沼響(あさぬまひびき)だよ」
 名前を聞いた瞬間、結花は誰だっけってとぼけた。
「娘さんは元気? 陽鞠ちゃん。娘と同級生だった子」
「なんで、うちの娘のことしってんの?」
「そりゃー、僕が娘に呉松さんのことを話したからね。それで陽鞠ちゃん嫌がらせされたんでしょ? 因果応報だね」
「ふざけないでよ! なんでうちの娘があんたの娘にいじめられないといけなかったの?! てかゆいちゃんの過去に娘は関係ない」 
 キャンキャンいぬのように吠える結花に対して、浅沼は「やっぱり反省してないんだね」と笑った。
「中学時代散々僕をいじめてくれたね。覚えてないんだ。大事な杖をぶっ壊したり、盗んだの誰だっけ? 呉松さんでしょ?」
「杖? そんなの覚えてないない。そんなのいつまでも根にもってるなんて、器せまっ!」 
 
 中学時代のことなんてとっくに忘れたわよ。
 こんな杖ごときでいちいち騒ぐとかばっかみたい。
 どうせ家族に嫌われてるんだろうね。こんな根に持つ人なんて、辛気くさいから嫌い。

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